不動産投資での相続税対策は借り入れ・現金どっちが有利?

相続税の節税対策として不動産投資が盛んに行われています。
特に、金融資産の相続税評価額を圧縮するために不動産投資が有効だとお勧めされています。
しかし、不動産投資では、現金を所有していても融資(借り入れ)を活用して行うことが一般的です。
・借り入れで不動産投資を行ったら、相続税の節税対策にはならないのでしょうか?
・金融資産を多く持っている人にのみ、有効な不動産投資による相続税対策なのでしょうか?
・相続税対策として不動産投資を行う場合、現金の場合と借り入れの場合とでは節税効果はどうなるのでしょうか?どっちが有利なのでしょうか?
などの疑問はありませんか?
答えは、現金でも借り入れでも相続税の節税効果は同じです。
今回は、1億円(土地価格3,000万円・建物価格7,000万円)で新築アパートを取得した場合を例に解説します。
現金で不動産投資を行った場合
1億円(土地3,000万円・建物7,000万円)のアパートを現金で取得した場合、相続税評価額は次のようになります。
【建物】
建物の相続税評価額は、固定資産税評価額が基準になります。
そして、賃貸物件であれば借家権割合(30%)を減じた評価額となります。
よって、
「建物価格 7,000万円 × 60%相当 = 固定資産税評価額相当 4,200万円」
「4,200万円 × 70% (借家権割合 30%減) = 2,940万円」
が、建物の相続税評価額になります。
【土地】
土地の相続税評価額は、国税庁が定めた路線価を基準に評価されます。
この路線価は、公示地価の約80%程度です。
さらに賃貸物件の土地は、貸家建付地評価減が適用されます。
よって、
「3,000万円 × 80%程度 = 2,400万円」
貸家建付地評価減 18% とすると、
「2,400万円 × 82% (貸家建付地評価減18%) = 1,968万円」
が、土地の相続税評価額となります。
合計すると、
「2,940万円 + 1,968万円 = 4,908万円」
です。
現金1億円に対し、アパートへの投資により、4,908万円の相続税評価額になるため、▲5,092万円の評価減効果があります。
※相続税評価の仕組みは「いまさら聞けない!不動産投資で相続税対策ができる理由とその計算方法」もご参照下さい。
借り入れで不動産投資を行った場合
先ほどと同様の物件に対して、現金1億円はそのままで、1億円の借り入れでアパートを購入したケースを計算します。
建物の相続税評価額 = 2,940万円・・・①
土地の相続税評価額 = 1,968万円・・・②
現金 = 1億円・・・③
借り入れ = ▲1億円・・・④
合計(①+②+③+④)すると、
「2,940万円 + 1,968万円 + 1億円 + ▲1億円 = 4,908万円」
となります。
不動産投資を行う前は、現金1億円の評価額だったものが、4,908万円の相続税評価額になるため、▲5,092万円の評価減効果があります。
現金と借り入れの比較
1億円(土地3,000万円・建物7,000万円)のアパートを、現金1億円で取得することにより、▲5,092万円の評価減効果があります。
同様のアパートを借り入れで取得した場合も、▲5,092万円の評価減効果があります。
以上のように、現金でも借り入れでも不動産投資による相続税の評価減は同じとなりますので、相続税の節税対策上も同じ効果となります。
まとめ
不動産投資での相続税対策は、現金・借り入れどちらでも効果は同じです。
ならば、不動産投資のメリットでもある融資を活用して、資金(資産)全体のバランスを見ながら、節税対策を考えることがベストです。
そして、大切なのは相続税の節税対策を行うためにも、賃貸の安定経営をしっかりと担う事です。
安定経営を前提に、節税効果のある適切な物件選びを心がけましょう。