少額ではじめられる不動産投資!不動産小口化商品で相続対策!

一般的な不動産投資は、融資を受けて自己資金以上の大きな金額の不動産を購入し、賃貸経営によって収益を得ますが、融資を受けることが不安だったり、購入後の入居者募集や建物の維持管理など手間がかかります。
相続対策として効果があると言われても、なかなか踏み切れない方も多いのではないでしょうか。
また、相続人が複数人いる場合、相続後の遺産分割が問題になることもあります。
そこで、不動産を口数単位で購入し、口数に応じて所有できる不動産投資商品として、不動産特定共同事業による「不動産小口化商品」が注目されています。
「1口5万円から」など少額で購入できるうえ、実際に物件を管理する必要がない投資方法です。
不動産小口化商品は優良な不動産の購入に借り入れを必要とせず、さらに課税評価を下げられるため相続対策に役立つ種類の商品があります。
今回は不動産小口化商品の内容とメリット、活用する際のポイントをご紹介しますので、特に金融資産を多く所有されている方には、相続対策の手段の一つとして検討してはいかがでしょうか?
Contents
不動産特定共同事業法に基づく「不動産小口化商品」
不動産特定共同事業法は1995年に施行されました。
投資家保護を目的とし、不動産小口化商品を取り扱う事業者は、国土交通大臣もしくは都道府県知事による許可制が設けられています。
「資本金1億円以上の宅地建物取引業者」「財産基盤の安定性」「業務管理者を常置」「監督官庁への事業報告」など、投資ノウハウのある従業員が所属し、健全経営を行っている一定条件以上の会社でなければ取り扱えないハードルの高い基準があります。
この法律に基づいた商品が不動産小口化商品です。
簡単に説明すると、出資者から募った出資金を使って事業者が不動産を購入し、出資者の代わりに運用します。
そして、家賃収入や売却時の代金を出資額の割合に応じて出資者に分配金として支払う仕組みです。
不動産小口化商品には「匿名組合型」「任意組合型」「賃貸型」の3種類の契約形態があり、それぞれの主な特徴は次のようになります。
項目 | 不動産の所有権 | 分配金 | 主な特徴 |
匿名組合型 | なし | 雑所得 | 出資者は不動産を取得せず、登記をしないため匿名性がある
優先劣後システムによる元本および分配金の安定性を確保 |
任意組合型 | あり | 不動産所得 | 不動産の共有持分を取得し、登記をするため匿名性がない
相続税や贈与税の節税効果あり |
賃貸型 | あり | 不動産所得 | 不動産の共有持分を取得し、登記をするため匿名性がない
相続税や贈与税の節税効果あり 商品の種類が少ない |
不動産小口化商品で相続税の節税効果が期待できる仕組み
不動産小口化商品の中で、「任意組合型」は不動産の所有権を持つことができるため、相続対策として節税や遺産分割などに活用できます。
「賃貸型」も所有権がありますが、供給されている商品の種類が少ないため、一般的には「任意組合型」が相続対策としての対象となります。
相続税節税の仕組み
現金を不動産に替えることで、相続税上の評価額の差を活用した節税対策が一般的に行われています。
相続税改正により、郊外遊休地で資産家によるアパート・マンション建設が盛んに行われたのもその理由のひとつです。
なぜ、現金を不動産にすることで節税効果が得られるのか?というと、物件の取得価格と相続税を計算する際に用いられる相続税評価額に差があるからです。
1.不動産(土地・建物)の評価
不動産は「土地」と「建物」とに分けられ、時価ではなく以下の評価方法によって課税額を再評価するため、課税評価を下げることができます。
土地の場合、市街地であれば「路線価方式」で、それ以外の地域であれば「倍率方式」で計算します。
路線価や倍率は国税庁のホームページで、地域ごとに調べることができます。
倍率方式は、固定資産税評価額に対して地域ごとに定めた一定の倍率を掛けて算出します。
さらに小規模宅地等の特例に適用されれば、敷地面積に応じて減額されることになります。
一方、建物の場合、固定資産税評価額で評価します。
通常は時価よりも低く見積もられているので、購入した現金よりも低い課税額となることで相続税が安くなります。
2.相続税の節税効果例
例えば、アパートを建設する際の工事費が、5,000万円かかったとします。
しかし、相続税を計算する際に用いられる建物の評価額は、アパートの工事費相当ではなく、固定資産税評価額です。
この固定資産税評価額は、実際のアパート工事費5,000万円に対し、約60%程度の評価額となります。
さらに、アパートのような賃貸住宅の場合、借家権割合として30%評価を下げることができるため、固定資産税評価額の70%相当が相続税評価額となります。
よって、2,100万円程度の相続税評価額になるのです。
5,000万円の現金は相続税評価額が5,000万円のままに対し、5,000万円でアパートを建築することにより、2,100万円の相続税評価額に圧縮できるのです。
実際に計算例をあげてみます。
法定相続人を1人とした場合、
(相続税評価額)5,000万円-(基礎控除額)(3,000万円+600万円×1人)=1,400万円
1,400万円×(税率)15%-(控除額)50万円=160万円
となり、納税額は160万円となります。
一方、現金でアパート建築をした場合は、
(相続税評価額)2,100万円-(基礎控除額)(3,000万円+600万円×1人)=-1,500万円
となり、納税額はありません。
相続税評価額を下げることにより相続税が節税できるのです。
※参考:いまさら聞けない!不動産投資で相続税対策ができる理由とその計算方法
任意組合型の不動産小口化商品は不動産と同様の相続税評価
「任意組合型」は、任意組合契約により取得した共有部分(金額に応じた持分)を組合に現物出資し、組合が運用した収益が分配される仕組みです。
運用期間が長期となる商品が多く、物件を所有して不動産事業を行っている感覚に近いため、不動産を所有している状況と同じ特徴を活かすことが期待できます。
つまり、任意組合型の不動産小口化商品を購入することにより、アパート・マンション建設と同じように、相続税の節税効果が得られます。
例えば、5,000万円の現金で不動産小口化商品を購入すると、約2,100万円の相続税評価額となるため、相続税の節税となります。
相続税改正の影響もあり、不動産特定共同事業の許可を得た事業者は、相続税の節税効果が見込まれる任意組合型の不動産小口化商品を販売するケースが増えており、注目を集めているのです。
J-REITとの比較
不動産投資を少額で行える商品として、投資信託の一種であるJ-REITが有名です。
不動産小口化商品もJ-REITと同じでは?と思うかもしれません。
しかし、J-REITは不動産を所有するわけではありません。
よって、相続税の課税評価を下げられないため、J-REITは相続税の節税効果は期待できません。
一方で、任意組合型の不動産小口化商品の場合、実際の不動産を所有することになるため、通常の不動産投資のような相続対策として活用されているのです。
似たような商品かもしれませんが、相続対策を考えた場合は、J-REITではなく不動産小口化商品の「任意組合型」を選択しなければ効果がありません。
【現物不動産・不動産小口化商品・J-REITの比較】
項目 | 現物不動産 | 不動産小口化商品
(任意組合型) |
J-REIT |
相続税評価 | 不動産の評価 | 不動産の評価 | 上場株式評価に準ずる |
所得 | 不動産所得 | 不動産所得 | 配当所得 |
資産運用と相続税の節税効果が期待できる不動産小口化商品
このように、不動産小口化商品はJ-REITのように少額から投資でき、分配金を得ながら相続税の節税効果が期待できるのです。
遺産分割もしやすい不動産小口化商品
不動産小口化商品のメリットは少額で不動産を所有できることです。
複数の口数を購入すればリスク分散にもなり、相続人が複数いる場合には、それぞれに分割して不動産を相続できます。
一方で、アパートやマンションを建設したり、不動産投資などで物件を購入して相続税の節税対策を考えた場合、自己資金+銀行融資を組み合わせることで、より大きな相続税の節税効果を手に入れることができます。
しかし、遺産分割が困難になる場合などのデメリットもあります。
例えば、3,000万円でアパート1棟を建設した場合、相続税の節税はできても、相続人が子ども3人の場合には、アパート1棟を3人で平等に分割するのは困難です。
では、子ども3人でアパートを共有で相続し、家賃収入も3人で分けるという方法はどうでしょうか?
この場合、共有持分では子ども1人が不動産を売却したいと希望しても、他の子ども2人の同意が必要となり、誰かが1人でも反対すると自由に売却や活用ができません。
意見が合わず、場合により子ども3人が揉めてしまうことにもなりかねません。
では、アパートを3棟購入し、平等に分割する方法はどうでしょうか?
このケースでは遺産分割しやすく平等にアパートを分けることができそうに思います。
しかし、その分借入総額も大きくなり、そこまで踏み込めないという方も多いはずです。
不動産は同じ立地に2つは存在せず、世界に一つしかない資産です。
よって、アパート3棟の資産価値や収益性を同じにすることは困難です。
ところが、不動産小口化商品の場合は、アパート建設と同様の節税効果を手に入れることが出来るとともに、同一条件での遺産分割がしやすい商品となります。
3,000万円のアパートではなく、不動産小口化商品3,000万円の場合は、子ども3人に対して1,000万円ずつ分けることができます。
つまり、不動産小口化商品は、遺産分割がしやすい節税商品でもあります。
ポートフォリオ(分散投資)も可能な不動産小口化商品
不動産は立地や物件のグレードなどによって収益性が異なります。
利回りや売却のしやすさが違うため、1つの物件を購入すると当たり外れがあります。
しかし、不動産小口化商品を様々な種類で複数購入すれば、リスクを分散できます。
また、賃貸需要も多くて資産価値(不動産価格)が何億もするような、都心の一等地などの個人ではとても購入できないような物件でも、少額から投資できる不動産小口化商品ならば手軽に保有できます。
そのような好立地で資産価値の高い物件を複数保有できるのが不動産小口化商品の魅力でもあり、リスク分散の上でメリットとなります。
例えば、3,000万円の金融資産があったとすると、
○○区の土地価値が高い駅近の「物件A」に900万円
△△県の収益性(利回り)の良い郊外の「物件B」に900万円
◇◇県の「物件C」に1,200万円
それぞれ購入したとします。
子ども3人で遺産分割する際は1人当たり、
物件Aは300万円
物件Bは300万円
物件Cは400万円
と、分けることができます。
このように、不動産投資における立地や市場に内在するリスクをポートフォリオ(分散投資)により低減するとともに、同一条件での遺産分割することが出来るのです。
借金不安なし!不動産小口化商品による相続税の節税
借り入れを行うアパート・マンション建設は、相続税を節税できることは理解できても「借金をしたくない」という方もいます。
また、相続人の中にも借金は嫌という方がいるかもしれません。
そんな方にオススメな現金の評価圧縮方法として、任意組合型の不動産小口化商品が活用できるのです。
借り入れが不要でアパート・マンション建設や不動産投資による物件取得と同様の節税効果が見込めるからです。
管理・運用の手間が不要
不動産小口化商品の対象物件は、許可を受けた事業者が管理・運営するため、アパート・マンション経営の手間がかかりません。
賃貸経営に不慣れな方でも、取り組みやすい相続税対策手段として人気を集めています。
また、突然相続でアパート・マンションを受け取っても、今まで賃貸経営にかかわったことがなければ戸惑うに違いありません。
不動産小口化商品であれば、賃貸経営に不慣れな相続人の方でも、安心して受け取れる不動産なのです。
不動産小口化商品のデメリットや注意点
1棟でのアパート・マンションを購入する場合と比較し、投資対象となる物件の管理・運営をすべて事業者に委託しているため、手間はかかりませんが収益は劣ります。
しかし、不動産小口化商品と言えども不動産投資に違いはありません。
商品ごとに特長やリスクが異なりますので、実物の不動産を購入する時と同じように、管理・運営を行う事業者をはじめ、物件である商品選びをしっかりすることが大切です。
また、相続税の節税目的であれば「任意組合型」の商品を購入することが必須です。
任意組合型と同様に販売されている「匿名組合型」などは、相続税対策にはなりませんので注意して下さい。
不動産小口化商品での相続対策が適した人
不動産小口化商品での相続対策に適しているのは、資産背景として不動産よりも金融資産の割合が高い方で、現金の節税対策をしつつ、安定的な資産運用をめざしたい方にお勧めです。
相続税の節税効果や運用利回りについては、自分で1棟アパートやマンションを取得(建設)して入居者募集や建物管理などを管理会社へ委託する方が、手数料などの諸経費(コスト)を抑えることができるため、効果が大きいと言えます。
しかし、相続税を少なくしたくても、借入や煩わしさに不安を強く感じてしまう方には、不動産小口化商品での節税対策がお勧めです。
まとめ
金融資産を不動産にすることで、相続税の節税効果を手に入れることができます。
このため、遊休地へのアパート・マンション建設や不動産投資が盛んに行われました。
しかし、入居不安や借入不安をはじめ、賃貸経営を行うことの煩わしさなど、簡単には決断できない方も多いのではないでしょうか?
これらの不安やデメリットを解消しつつ、現金の相続税対策として活用することができる節税商品が任意組合型の不動産小口化商品です。
少額ではじめられる不動産小口化商品を上手に活用することは、通常の不動産投資のように相続税の節税対策に有効な面があります。
さらに小口に分割できるため、複数の相続人で不動産を遺産分割する場合にも便利です。
遊休地におけるアパート・マンション建設や不動産投資による相続対策に悩んでいる方は、まず任意組合型の不動産小口化商品を選択肢の一つとして検討してはいかがでしょうか。
※参考