心配される東京オリンピック後の不動産価値の下落って本当?

いよいよ東京オリンピックが間近に迫っていますが、同時に不動産価格の下落も心配されています。すでに国内不動産市場は少子高齢化や人口減少で先細りが懸念されていますが、建設需要が下がるオリンピック後が追い打ちをかけるのではないかと囁かれています。
そこで今回は、オリンピック後に不動産の購入を検討している方のために、オリンピックと不動産価格の関係や、下落が心配される今後の不動産投資で注意するべきポイントについて詳しく説明しますので、参考にしてみてください。
前回の「東京オリンピック開催」で不動産価格は上昇した?
一般的にオリンピックの開催に伴って関連する建設工事が増加するため、景気拡大が期待されます。ホテルやマンションなどの建設が増え、その需要も多いことから不動産価格も上昇すると考えられています。
しかし、オリンピック開催後は反動による景気後退によって不動産価格が下落するとの見方もあります。では、実際にオリンピックの影響による不動産価格の上下動はあるのでしょうか。
実は1990年代以降における世界の夏季オリンピック開催国が、オリンピック開催後に景気後退に陥ったというケースは少ないという研究データがあります。
みずほ総合研究所によれば、1992年のバルセロナオリンピックを開催したスペインにおいて、オリンピック開催の翌年に起きたヨーロッパ通貨危機を受け、GDP成長率がマイナスに転じたほかは、オリンピック開催後に起きたITバブル崩壊に見舞われたオーストラリアや、同じくオリンピック開催後にリーマンショックが起きた中国も、GDP成長率はマイナスに転じませんでした。
いずれのオリンピック開催国を見ても、その後に景気が後退することなく経済成長を続けていることがわかります。
経済成長と不動産価格の関係
不動産産業がGDPに占める割合は比較的大きいので、GDP成長率の推移と不動産相場の推移は、ほぼ連動すると見ることもできます。日本でもマンションの供給や不動産証券化など、不動産産業がGDPに占める割合は1割を超えると言われます。
1964年の東京オリンピック前後における日本の実質GDP成長率は、以下のようになっています。
1960年 | 12.0% |
1961年 | 11.7% |
1962年 | 7.5% |
1963年 | 10.4% |
1964年 | 9.5% |
1965年 | 6.2% |
1966年 | 11.0% |
1967年 | 11.0% |
1968年 | 12.4% |
このように、オリンピック開催年とその翌年は成長率が落ちてはいますが、1966年からは大きく上昇していることがわかります。オリンピックと直接的に関係あるのかどうかの因果関係は断定できませんが、事実として経済成長率は大きくプラスとなっています。それに伴って不動産価格も上昇していると推測されます。
実際に1960年代初頭は高度経済成長期による景気拡大を受けて地価は大きく上昇し、東京オリンピックが開催された前後の年は成長率こそ低下したものの、バブル崩壊前の1990年頃まで地価の上昇は続きました。
今後の日本経済と不動産価格
2020年に東京オリンピックが開催される日本の場合、1964年頃の状況とは大きく異なる要素があります。それは人口減少と少子高齢化です。
人口が減少すれば不動産の需要も少なくなります。オリンピック開催に向けて都心には多くのマンションが建設されました。それだけ多くの物件が市場に出るということは、それに見合う需要がなければ、いずれ中古市場の下落につながります。
さらにオリンピック以外でもこんなことが囁かれているので注意しましょう。
※参考:オリンピックだけじゃない!不動産投資に迫る今後の問題とは?
まとめ
オリンピック開催後には不動産価格の下落も予想されていますが、賃貸需要が急激に落ちるわけではありません。不況時にも強いのが不動産の強みなので、景気の良し悪しで購入するタイミングを決めるのではなく、現在購入するのと5年後に購入するのとでは、どちらが資産を増やせるかなどを軸に検討してみてください。